【制作レポート】コムアイ+レイラ・パクザッド「灯台」

5.23

現在日本に住む在留外国人数は288万7,116人。日本の人口の約2%が在留外国人です。そしてそのうち、東京在留は56万180人。全国の19.4%を占めます。(令和3年3月31日出入国在留管理庁報道資料より)あなたが立ち寄ったコンビニに、あなたが暮らす街のご近所さんに、外国の方はいますか?

2021年9月5日(日)4時ごろに、東京スカイツリー天望デッキ350よりYouTubeライブ配信された、コムアイさんと日本に住むイランからの難民レイラ・パクザッドさんのコラボパフォーマンス「灯台」。このパフォーマンスが実った経緯は3年前に遡ります。

 

『隅田川怒涛』を企画運営するNPO法人トッピングイーストは、2016年から、音楽の枠に留まらずに縦横無尽に活動する音楽家が、東東京エリアを舞台に種を蒔くように多様な人々に出会い、水を遣るように土地の歴史を深く学び、いつか大輪の花を咲かせようと取り組む、リサーチ型のアートプロジェクト「BLOOMING EAST」をおこなっています。これまでコトリンゴさんや寺尾紗穂さんともリサーチを続けてきました。

 

2018年3月から、コムアイさんとのリサーチははじまりました。川崎市出身のコムアイさんにとって東東京はあまり馴染みのない場所ですが、東東京を舞台になにをリサーチするか相談するなかで、コムアイさんが抱いた「日本に住む外国人はどんな思いで暮らしているのか」という疑問からリサーチをはじめることにしました。

 

最初のリサーチでは、外国人が集うホステルや、エチオピア人が経営する飲食店などを訪ね、実際に日本に滞在したり、暮らしている外国の方に出会い、日本の印象や、日本に来た経緯を伺いました。

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【制作レポート】コムアイ+レイラ・パクザッド「灯台」

そこから1年。2019年4月には東京生まれ東京育ちのムスリム アウファさんや、リトルインディアと呼ばれるほどインドの人が集う場所・西葛西を訪ね、そこで生活する人がどのようなことを考え、生活しているのかを伺いました。

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【制作レポート】コムアイ+レイラ・パクザッド「灯台」

この「BLOOMING EAST」のひとつのアウトプットの機会として、『隅田川怒涛』でコムアイさんとのプログラムをつくり進めていました。隅田川周辺の会場で日本に住むたくさんの外国の方を巻き込んだパフォーマンスを構想し、2020年2月には十条にあるクルド料理店「メソポタミア」を訪ねたり、久しぶりにアウファさんご家族のもとを尋ねるなど、リサーチを進めていました。

【制作レポート】コムアイ+レイラ・パクザッド「灯台」

しかしコロナ禍でリサーチ活動は一旦休止。その期間、事務局スタッフのみで茨城県牛久市にある東日本入国管理センターに足を運んだり、定期的にコムアイさんと連絡を取り、コミュニケーションを続けてきました。

またコムアイさんとのプログラムとは別に、『隅田川怒涛』春会期では日本に住む外国の方に自国の文化(音楽や食、踊り、遊びなど)を披露していただく「結」というプログラムも構想しており、そのリサーチ活動や、開催への準備を進めていました。

【制作レポート】コムアイ+レイラ・パクザッド「灯台」
【制作レポート】コムアイ+レイラ・パクザッド「灯台」

(写真2枚目:四ツ木を拠点に活動されるエチオピア人支援団体「アディアベバエチオピア協会」さんが、コロナ禍で困っているエチオピア人に食糧支援をする「フードドライブ」という活動をおこなっていることを知り、野菜を詰める作業をお手伝いにも伺いました。)

2021年5月、緊急事態宣言発令に伴い、『隅田川怒涛』はオンライン開催へと変更を決断。交流を目的としたプログラム「結」はオンラインでの開催は難しいと考え、中止になりました。

 

コムアイさんとのプログラムも方向性を変更しつつ引き続きリサーチを進めるなかで、イランから難民として逃れて来たレイラ・パクザッドさんと出会いました。

レイラさんが語る故郷やイランに残してきた家族への想い、そして歌うことを心から愛する彼女に惹かれ、コムアイさんとレイラさんは出会った日に意気投合し、彼女とコラボパフォーマンスをすることが決定しました。

【制作レポート】コムアイ+レイラ・パクザッド「灯台」

「灯台」のパフォーマンスは2部構成で、前半はレイラさんに日本に来た理由や日本での生活などを伺うインタビュー、そして後半は2人の歌唱パフォーマンスです。

 

歌唱パフォーマンスでは、レイラさんがアカペラで2曲イランの歌を美しい歌声で披露しました。そして互いに「故郷」をテーマにした歌を教え合い、コムアイさんはレイラさんに、日本語で「ふるさと」を教えました。

 

こころざしをはたして

いつの日にか帰らん

山は青き故郷

水は清き故郷

 

2人が立っていた場所は西の方角。東京スカイツリーからレイラさんの故郷イラン、そしてコムアイさんの故郷川崎市を望みながら歌を届けてくれました。

「日本に住んでいる外国の方はどんな想いで暮らしているのか。」

そう思っても、なかなか話をする機会がなかったり、話しかけることは勇気のいることです。

職場やご近所、生活のどこかで日本に住んでいる外国の方に出会ったとき、互いの好きなことや特技を教え合うというのは、知り合うためのひとつのきっかけになるのかもしれません。

 

これからもNPO法人トッピングイーストとコムアイさんのリサーチは、かたちや方法を変えながら、続いていきます。

 

宮﨑有里

 

「灯台」のプログラム概要はこちら