コンセプト

酒を造ることができるほど清く澄んでいたことが、名前の由来の一説ともいわれている隅田川は、長きにわたり川面に東京そのものを映し出してきました。
その隅田川をひとつの舞台と見立てた、音楽とアートのフェスティバル。日本を代表するアーティストたちが、音楽を軸にしたライブ、パフォーマンス、インスタレーションなどを「春」と「夏」の2回にわたって展開します。
約200年前の江戸の華やぎを想い、この地の永い歴史に尊敬の念を込め、芸術表現活動を通じて、人々が怒涛のように混ざり合っていく姿を描くプロジェクトです。
ステートメント
『隅田川怒涛』春会期開催に寄せて
いよいよ!2年の準備期間を経て『隅田川怒涛』の春会期を迎えることができました。改めまして、これまでの間、開催に向けてご尽力くださった全ての方に感謝いたします。
残念ながら、東京では三度目となる緊急事態宣言下での開催となってしまい、隅田川沿いで皆さんにお会いすることは叶いません。隅田川南北約10kmを舞台に、たくさんのプログラムが同時多発的に展開され、それらの間を遊覧船に乗ったり新緑豊かなテラスを歩いたり、、という今となっては夢のような景色は、いずれまたの機会を探れたらと思います。
それでも、5月22日と23日に実施する全てのプログラムは、アーティストたちが隅田川沿いに集い、生配信というかたちで皆さんに楽しんでいただけるように設計しました。しかも、この形態だからこそ実現するパフォーマンスとして、蓮沼執太による「浜離宮アンビエント」には、寺尾紗穂と角銅真実のゲスト参加が決定。和田永による「エレクトロニコス・ファンタスティコス!~家電集轟篇~」と、いとうせいこうによる「ことばの渡し」の両プログラムがコラボレーションする時間も用意しています。
隅田川周辺は、さかのぼればこれまでに、明暦の大火をきっかけに両国橋が架けられたことによって栄え、飢饉による餓死者の慰霊と疫病退散のために今の隅田川花火の前身となる両国花火が生まれ、関東大震災、東京大空襲からも時間をかけて復興してきました。
葛飾北斎が描いた《怒涛図》の浪(なみ)のように、人と人とが混ざり合っていく姿を隅田川流域で描いていくプロジェクトが『隅田川怒涛』です。その精神は、会うことが叶わない状況であっても息づき、根を張り、未来へと確実につながっていくと信じています。
2021年5月10日 NPO法人トッピングイースト 清宮陵一
隅田川怒涛
清宮陵一
NPO法人トッピングイースト 理事長/合同会社ヴァイナルソユーズ 代表
1974年東東京生まれ。2001年に音楽レーベル「vinylsoyuz」を始め、音楽家による即興対決プロジェクト『BOYCOTT RHYTHM MACHINE VERSUS』を主宰し、2006年のドキュメンタリー映像作品製作以降、国立科学博物館、後楽園ホール、スタインウェイ工場(NewYork)にて公演を実施。今後も日本人音楽家が海外に挑むプロジェクトとして五大陸制覇を計画中。
坂本龍一氏のレーベル「commmons」に参画後、音楽プロダクション「合同会社ヴァイナルソユーズ」を立ち上げ、現在はさまざまな音楽家らと協業する傍ら、特別なヴェニューや公共空間でのパフォーマンスを多数プロデュース。2014年には音楽がまちなかで出来ることを拡張すべく「NPO法人トッピングイースト」を設立し、地元・東東京に根差したプログラムを展開。2021年にはTokyo Tokyo FESTIVALスペシャル13『隅田川怒涛』を実施予定。
メインビジュアル
隅田川怒涛
©一般財団法人 北斎館
今回、隅田川そのものが経てきたまさに「怒涛」の歴史に敬意を表し、ビジュアルには、葛飾北斎が最晩年に、小布施を訪れ描いたという、上町祭屋台の天井絵≪怒涛図≫を使用します。これは、本プログラムが、演者と観客、地域住民と来訪者を、分け隔てることなく鮮やかなまま混ぜ合わせ、そのぶつかりで生じる飛沫が川の流れになるようなイメージを重ねています。この屋台の天井図は「男浪」と「女浪」の二面で構成されており、『隅田川怒涛』では春会期には「男浪」を、夏会期には「女浪」をキービジュアルにしていきます。
葛飾北斎が晩年に描いたとされる≪怒涛図≫をキーヴィジュアルとし、写真家・小山泰介がその≪怒涛図≫からインスパイアされ撮り下ろした写真作品。この2つを対比するように並列に配置することで、過去と現在、伝統と現代の融合を想起させるヴィジュアルランゲージとしてのデザインを行っている。
ーartless川上シュン
移り変わり続ける川面の渦は、光と影がなければ見えません。水面に反射する街の姿から有機的な渦たちにフォーカスし、怒涛という激しい運動に宿る、パターンとカオスが混在した流動的な現象そのものをヴィジュアライズしました。
ー小山泰介
artless 川上シュン
artless 川上シュン
ブランディング・エージェンシー artless Inc. 代表。独学でデザインとアートを学び、現在、東京と京都を拠点に、アート/デザイン/ビジネス、そして、グローバル/ローカル という 5 つの視点を軸に、グラフィックから建築空間まで、すべてのデザイン領域における包括的なアートディレクションによるブランディングやコンサルティングを行っている。
受賞歴は、NY ADC、D&AD、ONE SHOW、RED DOT、IF Design Award、DFA: Design for Asia Awards、カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル/金賞など。
小山泰介(こやまたいすけ)
小山泰介(こやまたいすけ)
写真家。1978年生まれ。生物学や自然環境について学んだ経験を背景に、実験的なアプローチによって現代の写真表現を探究している。2017年まで4年間ロンドンとアムステルダムを拠点に活動し、現在東京在住。国内外での個展やグループ展多数。