【制作レポート】「ほくさい音楽博」
2021年8月14日(土)、22日(日)「ほくさい音楽博」が無事に開催されました。
「ほくさい音楽博」は、「学校で出会う機会のない楽器や音楽に触れ、子ども達の小さな好奇心を花開かせてほしい!」とスタートした子どものための体験型世界音楽博覧会です。
中心となるのは、子ども達による練習・発表プログラム。日本の伝統芸能「義太夫」「和楽器」、南米トリニダード・トバゴの「スティールパン」、インドネシアの「ガムラン」といった、どれも響きの美しい島国生まれの音楽です。その特徴は、いかに周りのみんなといっしょに「合奏する」できるか、息が合えば合うほど、さらにその響きの美しさに磨きがかかる音楽でもあります。この合奏を通じて、子ども達自身が自分の表現を探りながら、みんなで音楽を楽しめる、それが「ほくさい音楽博」の醍醐味でもあります。
講師は現役でステージに立つプロの演奏家たち。人を楽しませ、人の心をつかむプロが、音楽で表現することの楽しさを圧倒的な熱量で子ども達に伝えてくれます。
そして発表会当日は、「聴く」「応援する」「体験する」という多様なアプローチで、誰もが気軽に世界中の音楽に触れることができるのです。
今回の「ほくさい音楽博」は開催11年目 を迎え、NPO事務局主導から、これまで「ほくさい音楽博」を支えてきた地域のボランティアや保護者が集まったサポーターチーム「みまもり隊」にプログラムを委ねてみる試行錯誤の年でもありました。
さらに、コロナ禍という未曾有の厄災も重なり、試練の連続。本当に最後までどうなるかわからない中、話し合いを重ね、最終的に無観客・オンラインライブ配信で開催することができました。一人一人の意見に耳を傾け、不安を共有しながらも、前向きに当日を迎えることができました。
このレポートでは、発表会当日を迎えるまでの活動を写真とともに振り返ります。
2019年11月
翌年4月の発表会に向けて、義太夫、和楽器、ガムランの3プログラムの公募がスタート。
墨田区内小学校への募集チラシの配布が始まりました。
2019年12月
募集人数の多いガムランは参加者募集のため、墨田児童会館にてガムラン体験会を行いました。
12月15日、和楽器(8名)、義太夫(12名)の練習がスタート。
演目は「寿式三番叟」。昨年から継続して参加するの子ども達が中心となり、前より難しい表現に挑戦。女流義太夫の人間国宝・竹本駒之助師匠との共演を目指します。
2020年1月
1月13日、ガムランの練習も始まりました。楽器19名、舞踊6名と過去最多の参加者に。楽器には、保護者のみなさんにも参加いただき、初のフル編成で「タリ・ウィラユダ」に挑戦します。
2020年2月
発表会当日に配布するパンフレットの制作がスタート。
1日目は「日本の伝統芸能DAY」と題して、義太夫・和楽器の発表のほか、講談や長唄、落語などの体験会やライブなどプログラムが続々と決まりました。2日目は回向院にて「世界の音楽DAY」と題した、世界各国のさまざま楽器の体験会を企画し始めました。
2月末、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により一斉休校のニュースが。すべての練習が中止に。
2020年3月
練習再開の目処がたたない中、参加者へ何かアクションできないかと模索が始まります。
昨年の「寿式三番叟」の発表会の動画を公開したり、講師から子ども達へのメッセージ動画を配信したり、YouTubeにて「特別企画『MAKOTO is TRUTH』望月太左衛さん (和楽器) & 鳥居誠さん(ガムラン) 対談スペシャル」をライブ配信しました。
▶︎「【ほくさいTV】特別企画『MAKOTO is TRUTH』望月太左衛さん (和楽器) & 鳥居誠さん(ガムラン) 対談スペシャル」
2020年4月
緊急事態宣言の発令により、練習および発表会もすべて白紙に。
スティーパンの参加希望者も一旦キャンセルすることに。
2020年7月
練習再開を待つ中、来年以降のことの考えなければなりません。
今回の「ほくさい音楽博」が終了した後どうしていくのか、コロナ禍で何ができるのか、トッピングイーストとみまもり隊のみんなでの話し合いが始まりました。
2020年10月
練習再開に向けて、今できることをやろうということで、講師の協力のもと「みまもり隊」のガムラン演奏練習がひっそりと始まりました。
2020年12月
延期となっていた発表会の日程が、2021年5月22日(土)、23日(日)に決定。
2021年1月
コロナの影響により、ガムラン・スティールパンの練習会場が見つからない問題が浮上。
2021年2月
練習の振替日程が決まり、再開に向けて参加者へのアンケートを実施しました。
公募から1年以上が経過し、学年も上がり、環境の変化から、半数近くの参加者が辞退することに。
練習再開に向けて、専門家に相談しながら、練習時の感染症対策を考えた発表会当日のプログラムの再び検討し始めました。
2021年3月
スティールパンの公募がスタート。
スティールパンの搬入とあわせて、スタッフのお子さんに向けてちょっとした体験会も。
練習再開に向けて「ほくさい音楽博」オリジナルの健康チェックシートを制作。日々の検温、体調管理をしながら、発表会までの期間を楽しめるように。
練習会場も無事見つかり、感染症対策をした上で和楽器、義太夫、ガムランの練習が再開しました。
2021年4月
スティールパンの練習が始まった翌日に、3度目の緊急事態宣言の発令。全ての練習が中止に。
発表会当日は、無観客開催という話も浮上するが、そもそも緊急事態宣言中は人が集まって練習することができないため、5月の発表自体を断念。発表会の日程を『隅田川怒涛』夏会期の8月に再延期することになりました。
2021年7月
夏休み期間を利用した7月の練習再開に向けて準備を進めるも、4度目の緊急事態宣言が発令。
緊急事態宣言下での練習再開について、主催側から運営側(みまもり隊)に判断が委ねられ、急遽オンラインミーティングを開いて話し合うことに。
意見の多くは、延期し続けることで参加者の気持ちは離れ、保護者の負担が増えていくことへの懸念。とはいえ、中止して子どもたちの発表の機会を奪いたくない。話し合いの末、これ以上の延期はせず、感染症対策を徹底して発表会を行うことに。
7月末、緊急事態宣言下で練習を再開。
義太夫・和楽器の合同練習もスタート。
ガムランも練習再開。
2021年8月
ガムラン・スティールパンの練習会場が、緊急事態宣言下での使用ができないことに。
急遽牛嶋神社の春田宮司に相談。社若宮牛島神社の社務所を使用させてもらうことができ、無事最後の練習が終わりました。
8月14日
すみだリバーサイドホールにて、義太夫・和楽器の発表会が無観客開催。
翌週22日に雷5656会館にてスティールパン・ガムランの発表会を無観客開催。
発表会の様子は、オンラインプログラム『天空の黎明』内で後日配信され、今回の「ほくさい音楽博」は無事に終了しました。
今回の「ほくさい音楽博」で、これまでのように参加者を募集し、練習して発表するのは、一旦お休みとなります。
今後は「義太夫」「和楽器」「スティールパン」「ガムラン」それぞれが新しい目標に向かって、これからも変わらず、たくさんの子ども達がさまざまな音楽や表現に触れられるよう活動を続けていきます。
その取り組みのひとつとして、2021年10月からスタートしたのが、子どもがだれでも気軽に立ち寄れて、音楽やアートにいつでもふれられる場所づくりです。「ほくさい音楽博」の準備を進めながら、その間もずっと話し合いを重ねてきたなかで、発表会に向けた期間限定のイベントではなく、もっと子ども達の生活の近くに、子ども達自身でいつでも音楽やアートにアクセスできる場所の必要性に気づくことができました。
この活動を通じて、子ども達が自分の想いや考えを素直に表現する楽しさや、だれかといっしょにつくる面白さを知り、一人一人が小さな好奇心を大切にできる場を地域の人たちとつくりたい!そんな想いを胸に、毎週土曜日にトッピングイーストの事務所をひらきいていきます。
引き続き、「ほくさい音楽博」の試行錯誤の年は続きます。