【作家コメント】「water state 1」作家 坂本 龍一、高谷 史郎よりごあいさつ
いつからだろうか、水に魅せられている。水は様々な様態をもつ。温度変化による氷、水、水蒸気、そして水がつくり出す雨、雲、霧、雪、海、河、湖、滝、氷山、氷河などの自然現象は、どれをとっても、いつまで眺めていても飽きることはない。水素と酸素が安定して存在することは、奇跡に近いことなんだそうだ。
今回、隅田川にちなんで、隅田川の水とその上流の秩父の石をインスタレーションに使った。見た目はいつものwater state 1と変わらないかもしれないが、さらに愛着度が増したことは事実だ。こういうローカリゼーションはとても大事だと思う。ご尽力くださった皆さん、本当にありがとう!
坂本 龍一
《water state 1》は、水面に現れる波紋を見るための庭です。
天井に設置された324個(18 x 18)のコンピューター制御のノズルから落ちる水滴は、2m角の水面に波紋を作り出し、刻一刻と変化し続けます。その変化は時に、衛星から見た展示会場を含むエリアの降雨情報を元に作り出され、また数学的に自然の降雨をシミュレーションした原寸大の降雨、振動で作り出される変化し続ける波紋によって構成されています。
鑑賞者の目や耳に触れている変化は、「雨粒」というデジタルな情報から「水面にできる波紋」というアナログな無限の解像度を持った情報に還元され、鑑賞者の感覚で捉えられることになります。
今回、展示で使用している「水」は、隅田川から取水したものを浄化して使用しています。水盤に降り注いだ水滴は、天井のノズルへと戻され、循環しています。
空間に置かれている石は、隅田川の本流である荒川の上流の河原からお借りしてきました。その石の形は、川の水が長い時間をかけて削り、形作られた石です。
水滴が表面に当たり、波紋を作り出し、それぞれの波紋が重なり合い、打ち消しあいながら、消えていく様を眺め、聴いてください。
インスタレーションは鑑賞者と作品の間に存在するものです。
今回、それぞれ地元の関係者の方々やスタッフの皆さんとの協力によって実現出来た展示です。ご協力いただいた皆様に本当に感謝しています。
高谷 史郎
撮影:新津保建秀